Japanese English

【異分野融合工学による先進複合材料の高性能化の研究】

当研究室では,航空宇宙,運輸,エネルギー等の先端分野における先進複合材料の高性能化の研究を行なっています. 複合材料のものづくりは,構成要素から材料設計と形状設計を同時に行い,一気に構造を成形するという特徴があり, 材料力学・流体力学・熱力学・高分子化学といった異分野融合による基礎科学の構築が欠かせません. 当研究室では,このような複合材料のものづくりを対象として,実験・計算マイクロメカニクスの観点から, 強度や機能性発現のためのメカニズムの解明に取り組むとともに,環境や必要とされる機能に適応するスマートで 新しい高性能材料システムを開発することを目的として研究を行っています.

【先進複合材料・構造の最適成形加工プロセスのための基礎科学】

先進複合材料を用いた航空機構造成形では,素材の形成,加工による部材の形成,形状設計と加工による最終構造の形成という段階を経る 従来の材料の考え方とは全く異なり,構成要素から材料設計と形状設計を同時に行う一体成形が可能という特徴があります. 特に,近年,低コストなRTM(Resin Transfer Molding)成形法の開発が盛んに進められていますが, このような研究開発において,まだまだ基礎科学の構築は十分とは言えません.成形品の最終的な強度や機能は, 素材の化学設計,高分子樹脂の流動特性や温度依存相変化の特性,素材の複合化の力学等,複雑な要因に支配されます. そのため,材料力学・流体力学・熱力学・高分子化学といった異分野融合による考え方が複合材料分野において標準的な考え方となりつつあります. 特に,成形時の樹脂流動については,フィラメントスケールにおけるボイド発生・脱離メカニズムはまだまだ未解明です. そこで,当研究室では,これまでに,MEMS加工を応用したマイクロ流路を用いた特徴的な実験系を構築するとともに, 気液二相流解析を基にしたフィラメントスケールの樹脂流動解析プログラムを開発しました. これらの手法を応用しながら,より最適な成形方法を生み出すために,複合材料構造の成形に関する基礎科学の構築に現在,取り組んでいます.

【先進複合材料の高強度化に向けた実験・計算マイクロメカニクス】

軽量で高強度・高剛性を有するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は,航空宇宙分野に広く用いられ, 近年では,強化繊維,母材および繊維/母材間界面といった数ナノメートルから数十ミクロン程度のメゾスケール構造の制御により 高性能化された材料が,実用化されるようになりました.さらには,航空機用CFRP積層構造においては,層間にマイクロオーダーの 熱可塑性粒子を分散させて層間靱性を向上させた材料が利用されています.これらの材料を高性能化するためには,繊維・樹脂という マイクロオーダーのメゾスケール構造が破壊形態や強度特性に与える影響を評価することが欠かせないものとなっております. 当研究室では,これまでに,改良した走査型電子顕微鏡を用いて負荷を与えながらその場観察を行う手法を確立しており, この手法を基に,繊維・樹脂オーダーの破壊現象を観察しながら,有限要素解析などの手法を用いてモデル化する研究に取り組んでいます. このような材料のマイクロメカニクスの研究は,航空宇宙分野や先進機械分野において,より高性能な材料の設計に活用されていくことが期待されています. また,このような実験・計算マイクロメカニクス手法に基づき,熱融着による自己修復が可能な新しい発想の航空機構造材料の高機能化や, 最先端の自動車に用いられる,より先進的な複合材料への応用などに,現在,取り組んでいます.

注:「メゾ」とは,メゾソプラノやメソポタミアなどにみられるように,中間を意味する接頭語である.材料工学の分野では,原子・分子レベルの「ミクロ」と材料全体の「マクロ」の中間のナノメートル〜数十ミクロンの領域をメゾ領域と呼ぶ.

【薄膜超伝導線材の信頼性向上のための破壊特性評価】

薄膜超伝導線材の破壊機構に関する研究は,現在,最前線で開発が進められている薄膜超伝導線材の信頼性向上のために実施している 共同研究課題です.このような最先端の材料についても,従来の複合材料の破壊の考え方を応用しながら理解を深めていく必要があります. 特に,超伝導複合線材の場合は,超伝導層の破壊が臨界電流値の低下につながるため,超伝導層の破壊が起きる要因を抑えることが重要ですが, 薄層材料であるために,適切な評価法が確立されていないのが現状です.そこで,当研究室では,これまでに,DCB(Double Cantilever Beam)試験 および4点曲げ試験を用いた評価法を確立し,モード比によって,超伝導層の破壊が起きる条件が変化することを見出してきました. また,実用に用いられる超伝導複合線材の信頼性を保証するための評価法について,実験と理論解析の両面から確立していくことに, 現在,取り組んでいます.

【ソフトアクティブマテリアルの微視構造制御による高性能化の研究】

ソフトアクティブマテリアルの開発に関する研究は,ポリマー化学の分野で盛んに進められてきましたが, 現在,航空宇宙分野で展開構造やモーフィング翼などへの応用が検討され始めています.このような材料開発は, 現在,機能性を有するナノフィラーやナノ粒子を混合した材料の開発へ展開していますが,まだまだ研究開発途上段階にあります. これらの材料の高性能化のためには,材料が機能性を発揮するメカニズムについて,強化材・ポリマーのミクロ構造スケールや さらに下の階層のポリマーの分子鎖運動性の変化によって定量化していくことが重要となっています. 現在,この研究は緒についたばかりですが,材料を様々な形態で複合化することによって,新しい高性能材料を開発することも検討しています.




|| HOME > RESEARCH > INTRODUCTION ||